60th
Beyond 60 Years, the Journey Continues.

60年は、人とともに。

60年という歳月は、
ただ積み重ねられた時間ではありません。
一秒一秒に、問いがあり、想いがあり、
誰かとのつながりがありました。

1965年の設立以来、吉田秀雄記念事業財団は、
人と社会に向き合う活動を続けてきました。

その歩みを支えてくださった多くの方々に、
心より感謝を込めて。
私たちは今、60年目の一秒を迎え、
また次の歩みをはじめます。

ご挨拶/Greetings

吉田秀雄記念事業財団理事長 遠谷 信幸
吉田秀雄記念事業財団理事長
遠谷 信幸

吉田秀雄記念事業財団は、今年60周年を迎えました。この節目を「過去を振り返る」機会ではなく、「次の1年、10年をどう歩むか」「これから社会に何を残していけるか」を問い直すきっかけにしたいと考えています。私たちの使命は、常に社会とともに変化し、必要とされる存在であり続けることです。

広告は今、単なる商品訴求を超え、社会や人間の営みと深く関わる“広義のコミュニケーション”へと変化しています。もはや「広告学」や「マーケティング論」だけでは今日のコミュニケーションを語れません。そうした背景の中で、われわれ財団もまた、より広い視野で人と社会の未来を捉え、果たすべき役割を見つめ直す必要があります。

公益財団の役割は、社会の変化に対して柔軟に、そして主体的に向き合う意識を広げていくことです。今、そしてこれから何が本当に必要かを問い続け、行動に移していく責任があります。そのためには「学び続ける姿勢」が不可欠です。若い世代に限らず、経験豊富な大人こそ、新しいものに触れ、自分の頭で考えることが求められています。

AIのような新しい技術に対しても、「どんな社会につながるのか」と想像し、思考する力が必要です。目の前の情報を鵜呑みにするのではなく、それが未来にどうつながるかを想像する力。この人間ならではの営みを、テクノロジーと共生させることが大切です。物事の本質を問い続け、自分の言葉で語れるようになること。それがより良い社会をつくる原動力になっていくでしょう。

当財団の使命は、そうした人材を支え、育てていくことです。表面的な知識ではなく、自分の価値観を揺さぶるような問いや体験に出会ったとき、人は心が動きます。そこで初めて「自分ごと」として課題を捉え、行動を変えていく力が生まれます。私たちは、そのような変化のきっかけとなる学びの場を提供し、人としてのあり方に深く向き合う支援を続けてまいります。

当財団が担う3つの主要事業も進化させていきます。まず「研究助成」は、財団からテーマを提示し研究者とともに問いを深める共創型を目指します。『アド・スタディーズ』は、人や社会の変化を語り合い、実務家と研究者がつながる場として磨き上げます。「アドミュージアム東京」は、広告を社会文化の一部“カルチャー”として伝える体験の場へと発展させます。

60年の歴史を礎に、次の60年を見据えて歩みを進めます。変化の時代において、一人ひとりが「学びの当事者」であること。その意識こそが次の社会を動かす原動力になるはずです。ともに学び、ともに成長していきましょう。私たちの歩みは、まだ始まったばかりです。

事業内容/Our Works

研究助成事/アド・スタディーズ

研究助成 —— アド・スタディーズ

生前の吉田秀雄は広告やマーケティングの理論的発展に力を注いでおり、その遺志を継ぐ形でこの財団の設立と同時期に研究助成事業は開始されました。この60年間で研究者等に提供された助成金の総額は約12億円に達しています。
現在では、研究助成事業に加え、出版助成事業、財団が指名した研究者による委託研究、また季刊で発⾏する研究広報誌『アド・スタディーズ』を通した情報提供等も推進しています。

研究助成事/アド・スタディーズ

研究助成について アド・スタディーズについて

アドミュージアム東京

アドミュージアム東京

いつも、あなたに、新しい発見を。

人間のもつ普遍的な面白さ、愛おしさを
表現してきたたくさんの広告は、
人の心を動かすアイデアの宝庫。

笑いや涙、驚きや共感。
心を惹きつけるものは、時代をこえて、
根っこの部分でつながっている。

人が生み出してきたたくさんの広告を通して、
気づきや、新しい発見と出会ってほしい。

広告って、やっぱり面白い。

アドミュージアム東京へ、ようこそ。

アドミュージアム東京

アドミュージアム東京について

60年のあゆみ/History

  • 1965

    株式会社電通の出捐によって財団法人吉田秀雄記念
    事業財団発足(9月24日付文部省認可)
    初代理事長に日比野恒次 就任

  • 1966

    旧吉田邸を改修し、「吉田秀雄記念館」「吉田秀雄記念
    図書館」を開設
    東京大学経済学部に広告研究の振興助成のため、研究費
    を寄贈(1972年まで継続)

  • 1967

    大学の常勤研究者を対象に研究助成開始

  • 1971

    事務局と「吉田秀雄記念図書館」をレコード会館ビルに移転

  • 1973

    理事長 中畑義愛 就任

  • 1977

    理事長 田丸秀治 就任

  • 1978

    「吉田秀雄記念館」を品川区に譲渡
    事務局と「吉田秀雄記念図書館」をギンザエイトビルに移転

  • 1979

    『助成研究要旨集』(サマリー)発刊

  • 1985

    理事長 木暮剛平 就任
    創立20周年 井上靖氏を迎え記念講演会を開催

  • 1986

    産学協同研究として広告関係団体へ助成開始
    広報誌「ざいだんレポート」発刊(以降2003年第80号まで刊行)

  • 1987

    事務局と「吉田秀雄記念図書館」を電通銀座ビルに移転

  • 1995

    創立30周年『記念パンフレット』『研究助成総覧』の発行

  • 1997

    理事長 成田豊 就任
    創立30周年事業として『日本の広告研究の歴史』刊行

  • 1998

    「吉田秀雄記念図書館」を全面改修し、名称を「吉田秀雄記念広告図書館」と改める

  • 2000

    『昭和・平成期の広告研究論文』発刊

  • 2001

    吉田秀雄生誕100年記念事業として
    「アジア・プログラム」開始(2006年まで中国・台湾・韓国より30名の広告研究者を客員として招聘) 研究支援のための「消費者オムニバス調査」の実施およびデータ公開を開始 広告図書、広告資料を収蔵する資料室「大門分室」開設

  • 2002

    理事長 木村庸利 就任
    吉田秀雄生誕100年記念事業として 「アド・ミュージアム東京」を東京・汐留に開設(広告図書館を併設) 「助成研究吉田秀雄賞」創設 研究広報誌『アド・スタディーズ』発刊

  • 2003

    アド・ミュージアム東京の映像展示「時代の合わせ鏡」が日本産業映画・ビデオコンクールにおいて「奨励賞」受賞
    アド・ミュージアム東京「吉田秀雄生誕100年記念展」開催

  • 2005

    アド・ミュージアム東京 特別展示「メディアとしての博覧会展」開催
    創立40周年事業として
    『電通を育てた“広告の鬼”吉田秀雄』(加来耕三氏)刊行 アド・ミュージアム東京 収蔵作品図録『広告は語る』刊行

  • 2006

    台北市立美術館において「メディアとしての博覧会展」(2005年アド・ミュージアム東京特別企画展)開催

  • 2007

    理事長 松本宏 就任

  • 2008

    「東アジア広告研究交流シンポジウム」開催(「アジア・プログラム」研修研究者と日本研究者参加)
    アド・ミュージアム東京の入館者100万人達成

  • 2011

    公益財団法人として再発足

  • 2012

    アド・ミュージアム東京 特別展示「災害とコミュニケーション-2011.3.11からの広告展」開催
    資料室を大門から築地に移転

  • 2013

    理事長 森隆一 就任
    広告図書館 新図書システム完成。オンライン蔵書検索が拡充

  • 2014

    2011年に開始した委託研究の成果をまとめ、『アド・スタディーズ』特別号『未来がつくる広告 2020』として刊行

  • 2015

    創立50周年 記念ウェブサイト公開

  • 2016

    研究助成50周年

  • 2017

    新デジタルアーカイブシステム「デジハブ」稼働開始(収蔵資料管理データベース)
    「アドミュージアム東京」リニューアルオープン

  • 2018

    「デジハブ」の教育活用プログラム例として「広告の学校」を実施

  • 2019

    理事長 中本祥一 就任
    「吉田秀雄国際学術賞」の制定

  • 2021

    アドミュージアム東京 特別展示「コロナと新聞広告展」開催

  • 2022

    「吉田秀雄国際学術賞」の初贈賞式を実施
    「アドミュージアム東京」開館20周年

  • 2024

    理事長 遠谷信幸 就任
    事務局を時事通信ビルに移転
    新しいVIを導入

  • 2025

    図録『More than just Ads』刊行 創立60周年

60周年によせて/Messages

60年という歩みのなかで出会った方々に、この節目に寄せて、言葉を届けていただきました。
ひとつひとつの声が、これからの歩みにもつながっていきます。

須田 和博

須田 和博

博報堂/UoC クリエイティブディレクター

60周年、おめでとうございます。私とアドミュージアム東京の御縁は、自著『使ってもらえる広告』に収蔵品の「江戸香 広到香 御はみがき」の錦絵を掲載させていただいた所に始まります。当時の團十郎がブランド広告をするそれは、今のタレント広告とまったく同じ構図だと気づき、以後「新しい普遍」の探求が自分のライフテーマとなりました。その後、アーカイブ活用施策「20世紀広告研究会」を起案、そして2024年に21世紀の広告の拡張を全俯瞰した「コレって広告?!」展を監修させていただきました。広告は実施の瞬間に最大パワーを発揮するべく作られます。しかし、それゆえに過ぎ去って地層となると時代のリアリティを永久に保存する一級の一次史料となります。その意味で「20世紀の広告も、やがては浮世絵になる」はずです。貴重な現代史料を収集保管する日本唯一の広告博物館に今後も期待し、次世代に広告文化の価値を伝えるお手伝いができれば、誠にありがたいです。

大平 明

大平 明

全日本広告連盟 理事長

吉田秀雄記念事業財団設立60周年誠におめでとうございます。
60年の永きに渡る貴財団のすばらしいご功績に心から感謝申し上げます。
アドミュージアム東京の運営、ならびにデジタルアーカイブの充実は世界に誇るべきものとなっています。また、文科系の学術研究への助成が少ない我が国にあって、広告・マーケティング・コミュニケーション領域の学術研究助成事業は大変貴重、且つ有意義な事業となっています。今、広告・マーケティング・コミュニケーション分野も大きく変化しています。デジタル広告のアーカイブ化をどうすべきか等、大きな課題が山積しており、貴財団への期待は益々大きなものとなっています。これからもこれら社会的意義の高い事業の充実に真心を込めて当たり、その重要な役割を確り果たしていただきますよう祈念いたします。

嶋村 和恵

嶋村 和恵

早稲田大学商学学術院 教授

 学部生時代、小林太三郎先生から「皆さんの研究に有益な図書館」と紹介された財団の図書館は、当時東銀座のレコード会館というビルの中にありました。その後、図書館は銀座エイトビルに移り、大学院生になった私は、毎月のように足を運んでいました。財団の助成研究の対象が修士課程の大学院生にまで拡大されたときに、幸運にも採択されました。その後何度か研究助成をいただき、アドミュージアム東京開設の準備委員にも加えていただきました。現在は財団の理事、研究助成の選考委員まで務めることになっています。財団の歴史60年のうち50年くらいお世話になっており、本当に長いお付き合いです。
 現在の広告活動、広告を巡る環境は60年前とはまったく違うものになっています。財団の研究助成や、広告の力を社会に発信する活動がこれからも着実に進められることを心から期待し、私もできる限り協力したいと強く思っています。

八木 義博

八木 義博

株式会社 電通 Executive Creative Director

吉田秀雄記念事業財団の60周年、おめでとうございます。また、広告・コミュニケーション産業を支えてこられた財団の皆さまに、心より敬意を表します。これまで15年以上、アドミュージアム東京のアートワークや、財団のロゴ・VI開発など、さまざまな財団の取り組みに関わってきました。来館者や広告業界の発展に貢献したいという思いでしたが、振り返れば、私自身も多くの学びと成長の機会をいただきました。 中でも共感してきたのが、財団の根底にある「人間にまつわるすべてへの関心」という思想です。広告は人間そのものを見つめる営みである、ということ。これからも「広告は経営そのものである」という吉田秀雄氏の言葉を胸に、「美意識もまた経営の資源である」と信じ、ブランドの本質に向き合っていきたいと思います。 財団がこれからも若い世代にとっての思想の灯台であり続けること、そしてその未来に私も関わり続けられることを、心より願っております。 

美馬 のゆり

美馬 のゆり

公立はこだて未来大学 教授

広告は単なる商品紹介を超え、企業の理念や社会へのメッセージを伝えるものへと変化してきた。近年では、無意識の偏見、差別、格差、戦争、気候変動といった社会課題や世界規模の問題に目を向けさせ、行動を促す広告も増えている。AI技術の普及で誤情報や偽情報が溢れる現代において、広告が培ってきた表現の力は、公平さや正義への気づきをもたらし、社会をより良い方向へ導く力を今後も発揮していくに違いない。吉田秀雄氏の志を継ぎ、広告に関する資料を収集・保存してきた財団は、日本の広告史研究に資してきた。人の学びを研究する者として、知の継承や発信にとどまらず、対話や問いを通じて価値観や意味を見つめ直すことの重要性を強く感じている。設立60周年を迎える財団が、そうした挑戦を支え、より良い社会の方向性をともに模索する機会を、研究助成、研究広報誌の発行、ミュージアムの運営を通して、今後も提供し続けていかれることを願っている。

撮影:KO SASAKI
吉見 俊哉

吉見 俊哉

東京大学名誉教授・國學院大學教授

 設立60周年、誠におめでとうございます。私はこれまで、財団理事や助成研究の審査委員として関わらせていただいてきました。貴財団は、日本の広告コミュニケーションとマーケティングに関する研究助成の総本山であると共に、広告から大衆文化までのメディア資料の日本最大級のアーカイブです。ポスターやコマーシャルから看板、ビラまで、アドミュージアム東京に収められているのは、60年を遥かに超える日本文化史です。今日、その豊かさが、ネット化とグローバル化の奔流の中で忘れられがちです。しかし、実はそれらは21世紀でこそ再評価される世界性を有しています。温故知新――あまりに速くに情報が流れ、技術にすべてを委ねたがる社会の中で、経験とセンス、表現力に卓越した人々が、その技芸によって実現してきた文化の厚みを想起し続ける必要があります。貴財団は、そうした人間の知恵、表現の大切さを示し続ける橋頭堡であってほしいと思います。