吉田秀雄と鬼十則

編集部
2002年8月25日 00:00 Vol.1

吉田秀雄と鬼十則

広告に多少なりとも関心を持つ方々にとって、吉田秀雄はおそらく「広告の鬼」その人ではないかと思います。昭和26年7月、吉田は自らが実践する仕事に対する心構えを「鬼十則」としてとりまとめ、社員に示しました。
わが国広告界の近代化と欧米型広告業の確立、そしてマスコミと共生する広告業という日本独自のポジショニングを確立した株式会社電通4代社長。わが国の広告界を猛スピードで駆け抜け、59歳の若さで他界した吉田のイメージはあまりにも鮮烈でした。

かつてある新聞に、「鬼の間違い」という小文が掲載されたことがあります。すなわち、鬼十則の三番目に掲げられた「大きな仕事と取り組め、小さな仕事は己を小さくする」という言葉を取り上げ、「いまだにバブル期の尾を引きずって、小さいことは後回しにし、切捨て軽くあしらうような仕事ぶり」に繋がっていくのでは、と疑問を呈していました。
言葉が激烈であるために、そしてその成果が華々しかったが故に、「鬼十則」はいつか神話となりました。その神話は時を同じくした高度経済成長とあいまって、単なる功利的ガンバリズムと同一視され、時に誤解され、問題視されてきたとすれば、吉田の本旨ではなかったと思います。
吉田が言いたかったのは、おそらく今の時代に最も求められている「志の高さ」だったのではないでしょうか。そして己に厳しかったからこそ、他人に対しても厳しさを要求した。社員たちは、その生き様を知っていたからこそ、吉田を信頼し、ついて行ったのです。

吉田秀雄の実像が時間とともに風化する中で、吉田は私たちに何を残したか、そして私たちはそこから何を読み取るべきか、この連載を通じて改めて考えて見たいと思います。

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