オンラインで提供する、人生が変わる学び

2020年10月25日 16:14 Vol.73
   
森崎 晃
(株)リクルートマーケティングパートナーズ公教育支援グループマネジャー
Akira Morisaki
1986年、名古屋市生まれ。幼稚園時代、園内での事故で負傷しPTSDを負い、登園拒否。両親の寛容な教育方針のもと、塾に通い社会との接点を持ちつつ、周囲のサポートも得て、再び学校に通えるように。大学卒業後、金融機関等を経て2015年より現職。オンライン教材「スタディサプリ小学講座・中学講座」を活用した、 不登校の子どもや困窮世帯、学力不振の子どもを対象とする学習支援事業を主宰する。19年にはインタビュー記事がメディアに掲載され、不登校支援の取り組みをまとめた論文も執筆。 また、セッションへの登壇、親の会での講演、大学での講義など、子ども一人ひとりに合わせた学習支援の大切さを説いている。

コロナ禍において、教育機会の提供がしばらくストップ。公的な教育機関の課題が浮かび上がる中、幾つかの民間企業からオンライン教材が無償で提供されたのは記憶に新しい。中でも「スタディサプリ」は、以前から高い評価を得ていた代表格。このサービスはどのような価値を提供し、今後、どのような方向性を目指しているのか—リモート時代を見据え、オンライン教育についての新たな可能性を探るために、本サービスの提供元である(株)リクルートマーケティングパートナーズの森崎晃氏に話を伺った。

スタディサプリとは

―最初に森崎さん自身について伺えればと思います。現在の「スタディサプリ」の事業に携わるようになった経緯を教えてください。

森崎 私がリクルートに入社したのは実は比較的最近で、2015年のこと。その当時スタディサプリは何をやっていたかというと、まだ「受験サプリ」「勉強サプリ」という名称で、小中学生用の学習コンテンツを立ち上げたばかり。そこに関わったのがスタートです。なので入社時点では、高校生・大学受験向けのコンテンツだと、個人でも学校でも利用いただいていましたが、小中学生向けとなると、まだ個人でのご利用は始まったばかりという状況でした。

その後、小中学生でも各地域の教育委員会からお金を頂くことで個人には無償で提供するなど、家庭環境や経済状況によらず、広く使っていただけるサービスを開始。それを提供するのが現在、私の所属する公教育支援グループという部署になり、以来ずっとこの公教育の領域で仕事をしています。実は私自身も不登園・不登校の経験があるため、教育格差の解消につながる現在の仕事に携われることを、大変光栄に感じています。

―おっしゃったような“誰もが平等に教育を受けられる環境を目指す”スタディサプリのコンセプトを表したキャッチ「世界の果てまで、最高の学びを届けよう」は、すごくわかりやすいですね。元々のプロジェクトが立ち上がった経緯はご存じですか。

森崎 はい、スタディサプリのファウンダーは現在役員を務める山口文洋です。リクルートには「Ring」という社内向けの新規事業提案制度が今もありますが、彼が2011年に初めは「受験サプリ」という名称で、スタディサプリの原型の構想を起案。結果、見事にグランプリを受賞し、事業化することになりました。当初は月980円という安価な値段で(現在は月1,980円)、一流予備校講師の授業動画が見放題というサービスとして、大学受験向けにスタートしました。

またこのアイデアを思いつくきっかけとなったのが、立ち上げメンバーの中の1人が、「リクナビ進学」という進学情報を提供する業務の中で、ある高校生に行ったインタビューだそうです。その高校生は母子家庭で育ち、語ってくれたのは「大学の情報は既に十分に知っている。ただ、自分は幼い兄弟の面倒を見なければならず、予備校や夏期講習に通うなど受験勉強をする余裕が十分にありません」ということ。そこで従来の進学情報ではなく、学びの機会こそ、インターネットの力を使って、子どもたちに平等に届けるべきなのでは、という思いに至ったと聞いています。

―生徒の生の声が原点だったのですね。それから現在までの間、スタディサプリはどのように普及・発展してきたのでしょうか。

森崎 最初は個人利用から始まり、その後、高校や小中学校でも利用いただくケースが増えてきました。従来の学校は一斉授業が中心でしたが、最近は学力が多様化する中、学校でも一人ひとりに合った教材を使いたいというニーズが高まり、導入されています。スタディサプリはオンラインドリルの要素もありますが、どちらかというと“授業動画で教科の単元や概念から学ぶ”という面を重視。生徒個別の理解度に合わせて利用できることから評価を頂き、輪が広がってきたのかなと思います。

―例えば予備校ですと何年生数学とか、何年生国語として講座が提供されます。一方、スタディサプリの場合、人によっては2学年先まで学びたければ、それも自由に選択可能なのですか。

森崎 そのとおりです。小学校4年生から大学受験の内容まで、教科も問わず、オールインで提供しています。ただ、実際は先取り学習よりも、特に公教育の場合は学年をさかのぼって利用いただくケースが多い。というのも履修した範囲で抜け漏れがあったり、学校に行っていない期間があったりする子がかなりの数いるので、彼らのキャッチアップ用の教材として主に用いられているようです。

―となると、さかのぼりの場合、これは先生の指導とセットなのか、あるいは生徒が自分で操作して学ぶのか、どういうイメージでしょうか。

森崎 結論から言うと、指導ではなくて支援とセットであると、我々は捉えています。先ほどお伝えしたように、学習の抜け漏れや復習は、授業動画でわりとカバーできる部分が多いと感じていますが、一方で教材が目の前にあるだけで、生徒が学び始めるかというとそれは難しい。声掛けやペースづくり、場合によっては中学3年生の子に対して「1年生の連立方程式をやってみたら?」といったサジェスチョンなど、そういう支援的なことを先生にやっていただくと、よりうまく機能していくと感じています。

イメージとしては、学校の一斉授業の中で使っていただくというよりは、授業を終えた残り5分で確認問題をドリルで解き、その解答結果を先生が把握。あとは朝学習とか放課後学習とか、自宅での学習とか、基本的にはそれぞれの子が自習ツールとして、自分に合った単元、ペースで理解を深め、問題演習をして定着させていくという流れが一般的だと思います。

―集団教育のよさと個別のオンライン教育のよさをセットで使っていただいているということですね。

森崎 そう思っています。ちなみにレベル別の講座も用意していて、基本的にはスタディサプリの小学校・中学校版はそれほど難しくない基礎的な内容を重視しつつ、その中でさらに応用講座や基礎講座があったりと、レベル分けしています。何れにせよ、学校の授業を代替するものではなく、学校の授業がメインである前提で、名称の由来どおり“サプリメント的な補助教材”としての位置づけにある、という考え方です。

―ちなみに現在、どのくらいの学校で使われているのでしょうか。

森崎 小学校、中学校、高校でそれぞれ導入いただいていますが、今、こちらからお伝えできるのが高校の数で、約2,500校。公立、私立で半々ほどでしたが、コロナの影響でこのところ割合は多少変わってきているかなとは思います。

 
 
 
 

コロナ禍での受け入れられ方

―学校の休校決定後、御社が一番早く無償提供に踏み切ったと思いますが(4月で終了)、その際に学校、現場からはどのような反応があったのでしょうか。また、どんなニーズが今の現場にあると感じましたか。

森崎 まず、3月に無償提供をご提案後、例えば、ある大阪府の自治体からは「世のため人のためという理念を体現されましたね」という言葉を頂きました。そのほかの自治体の教育長や部長さんとやり取りをしていても、リクルートが言うなれば「身銭を切って覚悟を示した」という受け止め方をしていただいている例が多いです。 

これまでは、どうしても我々が何かを売る側で、自治体は買っていただく側という関係でした。今も基本は変わりませんが、この無償提供以降、非常事態でもあるので、子どもたちの学びのためにリクルートと自治体とが一緒になって全力を尽くす“協創関係”になれたかな、というふうに現場のマネジャーとしては感じています。 

あと、もう1点の現場のニーズについてですが、これはコロナ前後であまり変わっていないと思います。というのは本質的には公教育である以上、学力の高い子どもよりはそうでない子たちをケアしていこうという先生方が主で、その子たちのために何ができるか、という企みのパートナーとしてリクルートを位置付けている場合が多いです。なので本当に必要とするニーズは、理解のためのコンテンツが教材の中にあること、抜け漏れが出てしまった子どもたちが学年を超えたさかのぼり学習をしやすい設計になっていること、この2点かなと思います。

―コロナ禍で学習の機会を失った際、家庭でのサポートの有無で、後の学力に大きな差が出てしまったようです。そのあたりについて、活動の中で感じたことはありますか。

森崎 家庭のサポートによって差が生まれるのはおそらく厳然たる事実です。それに加え、自治体のサポートだったり、教育委員会の取り組みの的確さ、スピーディさ、もしくはそれを支える民間企業の働きぶりによっても正直、かなり差が出る印象です。我々も当然、利用いただいている自治体のほか、近隣の自治体についても、オンライン学習の導入状況について把握しています。隣の市同士でもかなり状況が異なり、国からの補助金もあって、財政面が理由でできませんとは言い難い今、公的な支援差については考慮すべき点です。

―現状では、その差は少しずつ改善されているのでしょうか。

森崎 はい、そう感じます。実際、スタディサプリに限っても4〜7月で数十の自治体が新たに使い始めました。全国約1,740の自治体のうち小中学校だけで、しかもスタディサプリに限っても数十ということを考えると、決して少なくないのではと思います。

こういう非常事態だからということもありますが、自治体の皆さん、教育委員会の皆さんが本当に徹夜する勢いでその準備をされていました。元々、政府の「GIGAスクール構想」で、小中学生には1人1台タブレットを配備し、ソフトウエアを各自治体が選定してオンライン教育を開始する予定でした。それを来年4月10日、もしくはこの下期から前倒しで始めるようにガイドラインが出たところで、コロナによる休校が続き、予定を急遽早めた自治体が大部分だと思います。

―するとポジティブに捉えれば、GIGAスクール構想がコロナによってアクセルが踏まれ、早く導入されるきっかけとなったということですか。

森崎 はい。タブレット配備の補助金に充てる国の予算も、コロナに合わせて前倒しで用意されることになったので、客観的に見てそういう理解でいいと思います。

―ではGIGAスクール構想の進展を受け、ツールの具体的な活用に向けた現場の取り組みは、どのように進んでいるのでしょうか。具体的なエピソードなどあれば、教えていただきたいのですが。

森崎 一つ、象徴的な例として大阪・泉大津市についてお話しします。この自治体は、休校期間中に小学4年生〜中学2年生(現小学5年生〜中学3年生)の児童・生徒全員にスタディサプリを活用いただき、学校再開後もいわゆるニューノーマルを見据えながらご利用いただいている例です。

まず休校期間中でいうと、授業動画や確認ドリルを使った学習機会の提供はもちろん、先生と生徒たちの間のコミュニケーションのプラットフォームとして、メッセージ機能を使っていただいたり、アンケート機能で検温の報告をしたりといったことにも、活用が広がりました。

これをご覧いただくと、戸惑っていることはまったくありません。むしろリアルで会えない中でも工夫して気軽にコミュニケーションが図れる“すごくいいツールじゃないか”というのが先生方の捉え方ですね。

そして学校再開後の今はどんな状況かというと、子どもたちが休校期間中にスタディサプリで学習した成果や履歴を、出席や成績に取り入れよう、子どもたちの頑張りをしっかり評価してあげようという流れになっています。あとは子どもの学習履歴を見て、「この子はこの単元が理解できていないな」とか「全般的にこの単元が苦手な子が多いな」といったことを把握できるので、ラップアップの授業で手厚めに説明をしたり、個別に取り出し学習で補習をしたりといった学習支援につなげていただいています。

市の教育長から頂いた総まとめのコメントの中でも「スタディサプリの採用はコロナによる休校対策だけでなく、市が目指す今後の学校教育を実現するための決断。多彩な機能を上手に活用することで、子どもたちも教員も楽しみながら効率的に授業を行い、“深い学び”につなげる時間の確保ができると考えている。スタディサプリを活用し、新しい教育の形を探していきたい」と書かれています。教育委員会としてもICT教材へのアレルギーや戸惑いは、今やないのかなという感じです。

スタディサプリに限らず、ICT教材全般はどれも、それほど難しい操作を先生たちに強いるものではありません。また子どもたちの使用にあたり、先生が全てお膳立てをする必要もない。授業動画や理解のためのアニメーションのコンテンツがある教材などについては、子どもたちが主体性を持って十分学んでいけるので、運営も成り立っているのだと思います。

   

スタディサプリが目指す学び

―「子どもたちの主体的な学び」に関連してお伺いします。スタディサプリとしては理想の学びについてどのようなイメージを持っていますか。

森崎 私のグループである小中学校の公教育の領域の話になってしまいますが、少なくとも公教育に関する学びは、偏差値が上がるなどではなく、自信がつくとか、褒められるとか、あとは「できた・わかった」の実感が湧くというのを一番、重要視しています。私自身が不登校だったこともあり、少し大げさな言い方かもしれませんが、そのとき、その学びに接したことで人生が拓けたり、変わるかもしれない、そんな学びもあると思っています。その体験を“LX”(Learning Experienceの略)と呼んでいて、それこそが我々が届けたいものなのです。

なので普通の公教育の学校以外でも、困窮世帯の子や不登校の子など、発達のデコボコがある子たちの集まる場で、ご利用いただけるよう取り組んできた経緯がありますね。

―するとその理想に近づけるには、現状ではどのような課題があるのでしょうか。

森崎 一番、大きいと思っているのが、教える側のリソースの問題です。先ほど“発達のデコボコ”という話をしたように、子どもが少子化で減っていることもあり、社会の中で子ども一人ひとりの特徴や個性を認める風潮が強まっていると感じます。これは素晴らしいことですが、学校現場ではそれと引き換えに、取り出し学習や個別支援を行うべきシーンが急速に増えています。一方、先生の数は変わらないので、個別対応に必要なリソースや人員が従来の学校教育の枠では、捻出するのが物理的にどうしても難しい状況です。

そこで「じゃあ、ICTの活用で解決できるよね」とは短絡的に考えられなくて、それだけでは不十分だと思っています。ICT教材のよさもあれば、リアル学習のよさもあり、一番は個別最適化学習ができることですが、それを実際にいい形で子どもたちにデリバリーすることを考えると商品だけが優れているだけでは不十分です。教育委員会とか先生、学習支援の場で関わる方々、そのほか多様な支援者が、ICT教材を教え手の聖域を侵す教務教材ではなく、自身の時間を子どもとの生身のコミュニケーションにもっと割けるようにするためのもの、と理解いただくことが重要なポイントです。

なので現在も継続的に「これはサプリメントであり、生身のコミュニケーションこそが一番」という考えをさまざまな方法で、しっかりとお伝えしている感じです。

 
 
 
 

コミュニケーション・ツールとして

―スタディサプリは授業の提供だけでなく、少しでも先生たちが本来やるべきことに集中できるように「for TEACHERS」というサービスがあります。このサービスについてもう少し詳しくお聞かせください。

森崎 スタディサプリ「for TEACHERS」は、スタディサプリの学習サービスの中で、先生用のもの。先生がこの「forTEACHERS」を使うことで、自分が担当する児童・生徒に対して宿題や課題を配信できたり、今、どういった講義動画を見て、何を勉強しているのかといったことを把握できます。そんな生徒一人ひとりの進捗を一元管理するためのシステムです。

―「for TEACHERS」を始めたのは、やはり現場の先生方からの要望などがあったからでしょうか。

森崎 そうですね。スタディサプリが徐々に学校で使われ始めた中で「個別学習の機会をより的確に提供したい」と、先生たちからの問い合わせがあり、広がってきたものです。

特に高校においては生徒一人ひとりに関して、どこがわかっていて、どこがわかっていないのかを把握するためのチェックテストを提供しています。スタディサプリを導入いただいた後、最初にそのテストを生徒に解いてもらい、採点し、その結果をスタディサプリ「for TEACHERS」に送ると、単元ごとに生徒一人ひとりの理解度の情報が集約される。これをもとに生徒別に復習すべき分野を洗い出し、また「for TEACHERS」から一人ひとりに向けて課題を配信する、宿題を出す。こうしてパーソナライズラーニングの支援ができるようになっています。

このようなシステムに頼らずに、各自の習熟度に合った指導をするのは、特に忙しいとされる日本の先生方には難しい。「forTEACHERS」を使えばそれが可能になり、さらには生徒が勉強している時間まで知れるようになっている。なので例えば、ある生徒が深夜にスタディサプリをやっているとシステム上で気づいた場合は、先生から生徒に朝方を勧めるといった生活指導も考えられる。そういったことにも使われているツールなのです。

   
好きな学年・科目・単元が学べる、スタディサプリの授業動画。視聴後に理解度をドリルでチェック。つまずき箇所がある場合は、もう一度、動画で復習する

―対面で会わなくても、逆にテクノロジーを活用することで見えてくるものがあるわけですね。

森崎 そうです。なので生徒側からすると、逆に嘘をつけない。「勉強しました」とか、「やっています」と言っても、講義動画をちゃんと見て課題を解いているか、正答率がどれくらいかというのが先生たちはわかってしまう。だから生徒たちも、“先生には会ってはいないが、いつもちゃんと見られている”といった意識を持っているようです。

―先生方も管理面でスタディサプリのサービスを使うことによって、例えば、授業の準備や生徒とのコミュニケーションに時間を確保できる。

森崎 おっしゃるとおりです。授業で教えることはもちろんですが、生徒の悩みや進路に寄り添って、より時間をかけて一人ひとりの自己実現をサポートしたいという思いを持つ先生たちも多い。「スタディサプリをうまく使うことで、そういった余裕を捻出できるようになった」との声はよく聞きます。

―それはよかったですね。ではスタディサプリの今後について、サービスのビジョンや、こんなことを実現したいというアイデアがあれば、ぜひお聞かせください。

森崎 これは繰り返しになりますが、やはり我々が存在する意義や一番の目的は、特に私の所属する公教育支援グループだと、困窮世帯だったり、不登校だったり、学力が低くて学校に行くのが辛いといった子たちをサポートすることだと思っています。なのでビジョンをもし1つ挙げるなら、やはり“LX”ですね。人生が変わる学び体験を届けられればと思っています。

そのために、「できた・わかった」の喜びが得られる手段をいっそう科学していくつもりです。例えば中学3年生の2次方程式が解けない子がいたとき、従来の学び直しですと「中2の最初からやり直してみよう」となることが多い。

けれども数学の単元は体系だっており、2次方程式がわからなくても、その前の学年の同じ系統の連立方程式が8割理解できていれば、2次方程式の基礎的な問題は簡単に解けるようになったりする。そういった、より科学的なアプローチとか、子どもたちの頑張りが周りにもわかって、その子自身も自分の成長が感じられるような仕組みを作っていく、といったことが私や私の部署、そしておそらくサプリ全体としても取り組むべき目標になります。

 
 
 
 

パートナーとの協創が不可欠

―話を伺っていて「人生が変わる学び体験」って、とても素敵だなと改めて思いました。また、今後は特に“できた・わかった”を子どもたちに感じてもらえるサービスを提供していきたいとおっしゃっていましたが、そのために工夫されている点やほかのオンライン教材と差別化を図っている点など、何かあったりしますか。

森崎 一言でお答えすると、公教育支援グループだけでなく、社内全体もそうだと思いますが、特に社外に協力者を作っていくということを強く意識しています。学校で利用いただく場合は先生、個別学習支援の場だと、例えばNPOの有償ボランティアの方などが、パートナーというか協力者になります。その方々が、スタディサプリをただのドリルや教材ではなく、コーチングするための道具、補助ツールだと捉えていただけることを重要視しています。

それにあたって大切にしているのが、「サプリを使うと学力が伸びた」ではなく、「サプリを使うと子どもたちにこういう変化があった」とか「支援者の方にもこんな素晴らしいことがある」という視点。これを丁寧に誠実に、場合によってはイラスト等の力も借りながら、地道に説明していくべきだと考えます。

なので“こんな機能があります”といったきれいな答えにはならないのですが、いわゆる学習デザイン全体として、「ああ、子どもたちにとってやっぱりいいね」と心になじむものを提案し続けるつもりです。

―その際に協力者が不可欠だとすると、例えば協力者の方向けの勉強会とか、イベントとか、そういうものも計画されていますか。

森崎 はい、スタディサプリを使った支援の場がある自治体や、ご利用いただくことが決まっている学校の方向けには、既にやっています。まだ、そうではない方々、特に小中学校の公立の先生は今回、コロナによる一斉休校を受け、皆さん本当にそれぞれ工夫されて動き出していたり、SNSで頻繁に情報発信をしていらっしゃる方も増えている。理想をいえば、そういう方と協創というか、共に作っていくような動きは何かできればと考えています。

―「一人ひとりに寄り添う」ということを先ほど森崎さんはおっしゃいましたが、お話を聞くと、スタディサプリには、子どもたちの実に多様な状況に合わせ、しかもその時のフェーズに合ったサポートができる仕組みがあるのですね。そこに感動しました。

森崎 ありがとうございます。でもあえてお伝えしてしまうと、まだ課題もいろいろ残っています。例えば公立高校受験については、多くの都道府県は内申点がとても重要なので、不登校の子が中学3年生の夏休みから、「よし、気を取り直していい高校へ行こう」と頑張っても、現実としては内申点などの制度上、難しいものがあります。そういった“ガラスの天井”を破るサービスも、少しずつでも開発し、いつか提供できればと思っています。

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