アグリガール誕生前夜
―まずは大山さんのご経歴について教えてください。NTTドコモ(以下、ドコモ)ではどのようなお仕事をされていたのでしょうか。
大山 1995年にドコモに入社後、2007年に子会社のドコモ・ドットコムに出向し、モバイルコンテンツのコンサルティングなどに携わりました。ターニングポイントとなったのは、ドコモに復帰後、2014年に法人営業部でJAグループ担当になったことです。ちょうどこの年からドコモは地域課題、農業に注力し始めました。私のミッションは、JAと回線の契約を結ぶことでした。そのミッションを達成するために「農業ICT 推進プロジェクトチーム」を立ち上げ、農業×ICTにも取り組んでいくことになったのです。
通常、法人営業部の業務は、顧客となる企業の本部と契約すれば、各支店にも自動的に契約が広がっていきます。ところがJAグループは会員組織であり、全国各地に600近くの独立した組織があります。それぞれが独立しているため各地の組織と個々に契約を結ばなくてはなりませんでした。しかし自分1人ではとても回りきれないし、全員と信頼関係を築けるほど密なコミュニケーションを取ることもできません。以前から全国のドコモ支店の協力が必要だと考えていましたので、その解決策として考え出したのが、後でお話しする「アグリガール」です。
JAと回線を契約するには、先方の役に立つICTソリューションが鍵になると考えましたので、まず、そこから始めました。そして「モバイルで利用可能な農業に役立つコンテンツ」を探していたとき、ちょうどドコモの他部署で提携していた、大分県のベンチャー企業「リモート」が開発した、牛の分娩事故を防ぐ「モバイル牛温恵(ぎゅうおんけい)」というシステムに出合えたのです。
―それは、具体的にはどのようなシステムだったのでしょうか。
大山 出産が近づいた母牛にセンサーを取り付け、体温を測定しながら分娩の細かい経過や発情の兆候を検知するものです。体温グラフはスマートフォンやタブレットで確認できるため、農家さんたちはいつでも、どこからでも、牛の状態を把握できるようになります。
ソリューションとしては、牛の体温をキャッチするだけ、というシンプルなもの。もともと、牛の体温が一定温度に下がったら出産1日前のサイン、というのは牛に関わる人なら知っている情報です。このICTソリューションは、こうした母牛の体の変化に着目したものでした。
しかしシンプルながらも、農家さんの負担を減らすという意味では、非常に画期的なアイデアです。というのも、牛の畜産農家さんは出産に立ち会わなければなりません。出産予定日の約1週間前から不眠不休で牛に付きっきりで、肉体的・精神的に大きな負担を強いられていました。なので、牛の体温の変化を遠隔で管理できるようになれば、その時間を大幅に削減できます。
ただシステムは既にあったものの、サービスとして成立させるには通信をもっと安定させたいという課題を抱えていたので、ドコモの通信技術部門が支援し、また、ドコモの法人営業部門が普及促進するといった形で手を組み、実用化したのです。ここでベンチャーと協業する機会を得られたことは、現在の自分の活動にもつながる大きな経験になりました。
―ベンチャー企業との協業の中で、大山さんにとって印象深かったことはありますか。
大山 実は、大分のベンチャー企業と組む前には、農業ICTに注力する大企業に相談もしていました。しかし、ほとんどが、既にプロジェクトが始まっているか、自社の中で完結できる、などの理由で、協業に結び付きませんでした。一方、ベンチャー企業は、優れたアイデアやアイテムを持っていながら、何かが不足していて世の中にうまく出られずにいるケースが多かった。
そこで、ドコモがその部分を補うことによって、お互いに利益を得られる共創関係を築くことができました。この牛のソリューション以外にも、農業の課題を解決するために「水田センサー」「生産記録ツール」など、利便性が高い商品を開発しているベンチャー企業もありました。そのベンチャー企業に足を運び、商品開発や販路の開拓などの協業を進めました。
アグリガールの果たした役割
―その後、農業の現場にICTソリューションを普及させるための「アグリガール」を立ち上げられています。着想はどこから得たのでしょうか。
大山 アグリガール誕生のきっかけは、先の「農業ICT推進プロジェクトチーム」が、たまたま女性2人でスタートしていたことでした。2014年当時、JAの会議や生産者さんの集まりに出席すると、ほとんどが男性でした。特に畜産業界では、女性はとても珍しがられました。そういった環境の中で、ICTに馴染みのない農家さんたちも、興味を持ってくださったんです。そこで、試しに「アグリガール」と名乗ってみたところ、キャッチーなネーミングも功を奏し、「アグリガールって何なの?」と農家さんが面白がってくださって、コミュニケーションが生まれやすくなりました。
―「アグリガール」としては、具体的にはどのような活動を行っていたのでしょうか。
大山 アグリガールは社内の人事とは関係のない自主的なプロジェクトチームなので「誰でも加入でき、自由に脱退できる非公認組織」にしていました。社内の共有フォルダにエクセルで作った名簿のような表を置いておき、名前を記入すれば加入が完了します。
立ち上げ当初は、そこまで人数を増やさなくていいし、また増えないだろうと思っていました。九州に1人、四国に1人といった具合に、地域に1人ずつぐらいの規模のイメージです。また、活動内容として主に想定していたのは、各支店の法人営業部の社員がメンバーになって、JAや農家の方々と密にコミュニケーションを取りながらニーズをヒアリングしてもらうこと。
何気ないコミュニケーションの中から地域が抱える課題を発見し、それを解決することで、農業を軸とする地域活性化につながると考えていたのです。
―アグリガールのフラットなコミュニケーションや、農業やテクノロジー分野外からの「異なる視点」がもたらす「気づき」が、研究分野からも注目されているように思います。どんなことを最も大切にされていましたか。
大山 女性は生活密着度が高く、野菜や肉の値段などもよく知っていて、消費者目線で農家さんと話すことができます。アグリガールも、そのような何気ないコミュニケーションから関係構築を始めたのだと思います。大切なことは、農家さんの仕事に好奇心を抱き、教えてもらうこと。こちらが興味を持つと、農家さんも喜んで話してくださいます。
ICTソリューションを農家さんに導入したいという前提で訪問していると、どうしてもICTを農家さんにご紹介しよう、という姿勢になりがちです。でも、商品を売るより先に、農家さんに心を開いてもらわなくては関係を築けません。
また、日常的な会話は、信頼関係を築くだけでなく、こちらから新しいサービスを提案するためのヒントがたくさん潜んでいます。というのも、例えば「新しい携帯が欲しい」といった、すでに言語化されている欲求は、口にしている時点でほぼほぼ満たされているんですよね。
一方、会話の中から課題を発見できるようになると、潜在的な部分からニーズを引き出すことにつながります。アグリガールの強みは、地域密着でこまめにコミュニケーションを取り、「私が農家さんだったら何が欲しいかな」というお客様の目線でソリューションを提案できることでした。
―他者に共感し、想像力を働かせることを大切にされていたんですね。
大山 そうですね。先ほどの「牛温恵」を農家さんに浸透させる過程においても、アグリガールは、農家のお母さんの苦労の部分に共感したんですよね。九州は畜産農家が多いのですが、話を聞いてみると、牛の出産予定日が近づいてもお父さんたちは、夜はお酒を飲んで寝てしまうことがあるそうなんです(笑)。
でも女性は、特にご自身も出産経験があったりすると母牛の苦労がわかる。それで心配でずっとそばで見守っていたりするんですね。そうすると、お母さんのほうがどんどん睡眠不足になり、体力も消耗する。でも牛が気になって休めない。そういった葛藤の部分に共感を感じられるのが、アグリガールの強みだったと思います。
―アグリガールの活動の中で、印象的なことはありましたか。
大山 「牛温恵」を導入してくださった農家さんから「ありがとう」と言われることです。それまで、ドコモのサービスというと、回線の契約を結んでも、携帯電話を売っても、お客様からお礼を頂くというよりは、ドコモがお礼を伝えるほうが一般的。
一方、「牛温恵」は導入に50万円以上もかかるサービスでありながら、お客様から「助かりました」「ありがとう」と言っていただける上、牛が生まれたら「無事、子どもが生まれたよ」といった報告まで頂けるのです。そういったお客様からの自発的な言葉が、私たちにとって励みになりました。アグリガールがドコモという企業の枠を超えて、農家やJAの方と地域密着のチームのように成長していったんです。これは、全国に支店を持つドコモの強みを生かせた部分だなと思っています。東京の社員がその都度、地域へ足を運んだとしても、ここまで密な関係を築くことは難しいですから。
―人間関係を構築し、地域から必要とされる存在になったことが、アグリガールの成功の要因だったともいえますね。
大山 そうだと思います。ただ、成功はアグリガールだけでなし得たものではありません。ほかの要因として、インセンティブもあるでしょう。九州を例にすると、ICT の売り上げに、牛のICTソリューションが貢献しています。だから、アグリガールだけではなく、ほかの社員や管理職までもが、こまめに農家さんに足を運んで牛の様子を見るなど、牛へのサービスに力を注いでくれました。私が東京から電話をすると、電話の向こうから「モー」って牛の鳴き声が聞こえてくることもありました( 笑)。
そういった社内全体の高いモチベーションとも相まって、持続可親機 子機 体温センサー 能な売り上げにつながっていたのだと思います。
―支店の皆さんは、最初から協力的だったのですか?
大山 実は、支店の方たちがここまで牛のサービスに注力するようになるまでには、ちょっとした苦労がありました。なぜなら、牛の出産は土日も関係ないので休みがとりにくく、夜間にサービスのトラブルが発生する可能性もある。さらに、農家さんへの機器の設置についても、なぜ営業社員が負担しなければならないのか、という声がありました。
そうした社内の不安をすべて解決し、安心して取り組んでもらうために、農業専用のコールセンターを新たに設置するなど具体的な解決策を提示しました。一つ一つ不安を解決することで、徐々に社内の協力を得ていったのです。
当人たちにとってアグリガールとは
―社員の方にとっては、アグリガールになることは、どんな魅力があったのでしょうか。
大山 働きやすさ、と、承認欲求が満たされる、という2つの要素が大きかったと思います。
働きやすさに関しては、先ほど触れたように、現場の負担を徹底的に減らしました。私も経験したのですが、これまで法人担当の部署は、営業職の負荷が大きかったんですね。見積もり作成、請求書の送付、契約機器の設置、問い合わせへの対応、それらすべてを営業担当者が1人で対応する仕組みになっていました。牛のサービスに関しては、それらの見積もりや請求書発行等の事務作業や問い合わせなどは、すべて東京で処理できるようにして、現場の人は本来の営業に注力できる仕組みにしました。各地のアグリガールたちには「事務作業は東京でやるから、農家さんと仲良くなってきてね」と、よく伝えていましたね。現場の負担を減らし、売り上げにつながりやすいシステムをつくる。この仕組みを確立したことが、現場の働きやすさやモチベーションアップへとつながっていきました。
―それでは、承認欲求の部分は、どうだったのでしょうか。
大山 これは、社外の人からの評価ですね。大企業に勤めていると、なかなか褒められる機会が少ないと思うのです。会社にとってわかりやすい成果を出し、どんどん出世する人が称賛される一方で、会社の評価とは違う軸で高い能力を持っている人は埋もれてしまう。その分、農家さんやJAさんから感謝されれば、アグリガールたちにとっても大変嬉しいことですし、それが仕事のモチベーションのアップにつながっていったのだと思います。
近年は社会的に女性の活躍を後押しする流れが出てきていますが、まだまだ結婚、出産などライフイベントの影響で、能力が高いが出世はできにくい女性社員も多いと思います。しかし、アグリガールは、出世とは別軸の外部から目に見える評価を頂けたことが、彼女たちの張り合いになったのではないかと思います。
―アグリガールはその後、100名を超える団体へと規模を拡大していきました。どのようにしてメンバーが増えていったのでしょうか。
大山 いざ始めてみると、想像以上に賛同してくれる人が多かったんです。東京の社員で、各地域の支社に行くたびに「アグリガールにならない?」とスカウト役を進んで担ってくれる男性の方もいて、着々とメンバーを増やしていくことができました。
そのうち何年かすると「アグリガールの活動を見て入社した」という新入社員も登場するようになりました。理由を尋ねてみると、彼女は大学でSDGsへの取り組みや第1次産業が抱える課題などについて学んでいて、そういった社会活動に力を入れている企業に入りたいと思って入社したそうです。
IoTデザインガールの誕生
―アグリガールの成功後、農業の分野にとどまらない、部署横断型の「IoTデザインガール」も立ち上げられました。どのようにしてプロジェクトを発展させていったのでしょうか。
大山 まず、アグリガールが抱えていた課題として、社内異動をすると続けられなくなる、という問題点がありました。群馬支店の法人営業部だった人が、東京に転勤してメーカーさんの担当になると、当然、アグリガールの仕事はできなくなる。アグリガールの名簿に名前を残し続けることはできるけど、「異動してもアグリガールの活動を続けたい」といった本人たちからの要望に応えられる方法を考えあぐねていたのです。
そんなときにヒントになったのが、雑誌を読んでいて目にとまった、東京大学の森川博之先生の「これからはIoTだ」という言葉でした。森川先生は記事の中で「IoTはNTTなど通信会社が力を入れていくべきもの。もっと津々浦々に広げていく必要があり、かつ、現場での地道な活動が大事」と主張されていました。読めば読むほど、「あ、これ、今までアグリガールが農業の分野でやっていたことだ」という気になっていきました。既に各地で地域自治体など農業以外の地域課題の取り組みを始めているアグリガールもいたので、すぐに農業以外にも広げられるという自信がありました。そこで、「よし、地域課題や社会課題を解決するIoTデザインガールだ」と思いついたのです。
これなら、群馬から東京に転勤した人でも、社会課題を解決するデザインガールとして活動を続けられる。しかも、アグリガールだと、社内の農業を担当する役員からしか応援されないけれど、IoTならドコモの本業であり、役員全員から応援してもらえる継続的な仕組みになる。私は、もっとガールたちが社内から評価されてほしいと思っていたので、これはいい機会だと思いました。
―その後、IoTデザインガールはドコモ社内だけでなく、他企業からも人を集める形で発展されました。どのような経緯があったのですか。
大山 少し話がさかのぼりますが、アグリガールは農林水産省と連携してもらっていました。「デザインガールも総務省から応援してもらえないかな」と思っていたところに、ちょうど総務省からアグリガールに関する講演の依頼を頂いたのです。そこでチャンスだと思い、「新しく立ち上げたIoTデザインガールの話をしてもいいですか」とお願いしたところ、総務省の担当の方にとても興味を持っていただけて「むしろ総務省が中心となってプロジェクトを進めたい」と言ってくださったんです。これをきっかけに、ドコモ以外の会社からもメンバーを集め始め、最終的に50社から50名が集まりました。今年で5年目になり、現在も続いています。
名前が変わり、扱う分野が広がったとしても、共感力をはじめ、コミュニケーションを大切にしている点では、アグリガールもデザインガールも同じです。いま、世の中全体でDX 人材が話題になっていますが、その多くが、プログラミングができたり、Wi-Fiや5Gに詳しかったりといった能力が注目されています。それも大切ですが、それらを本当に世の中に普及させるためには、知識だけではなく、その内容をわかりやすく伝えることが大事だと思うのです。それが、本当の日本のデジタルの活性化につながるのではないでしょうか。
コミュニケーションでの通訳の重要性
―「伝える」という部分について、もう少し詳しくお話を聞かせてください。専門家と、そうでない人との間では、共通言語の違いや、背景知識の有無などで、コミュニケーションが難しくなるケースが多々あります。そういったコミュニケーションの壁を取り除くためには、どんなことが大切だとお考えですか。
大山 私も、自分が文系出身なので、理系の研究者の方々とのコミュニケーションに苦労したことが何度もありました。特にそれを痛感したのが、2017年に研究企画部門に転籍し、社内の研究者たちと相談しながら仕事を進める機会が増えたときです。研究者の方々は、専門用語を使って、どんどん研究技術やシステムの課題に入っていく。私は、共通の思いがわからないので共感できない。逆に、私が考えることや意見が、研究者の方には伝わりにくかったりもする。
最近、電力会社で長く研究職をしていた父と話をしていて「研究者にとってはひらめきが第一。だから相手から先にアイデアや意見を披露されると面白くないものなんだ」と言われ、ハッとしました。ビジネスの世界で「アイデアよりも実行」と教えられてきた自分とは、コミュニケーションの考え方自体に大きな齟齬があったことにようやく気づいたのです。
私の場合は運よくNTT 社内にデザインガールに賛同してくれる研究職の方がいて、その人が“ 通訳”をしてくれることで、その問題を乗り越えることができました。その体験から、研究者と現場とのコミュニケーションには、こういった通訳を介した関係をつくることが効果的だと思っています。
でも実はこの図式って、アグリガールがICTソリューションを農家さんたちに提案したのと同じ。テクノロジーは、ただそこにあっても馴染みのない人には使いこなせなくて、アグリガールがその使い方や機能を農家さん側の立場になってレクチャーする。アグリガールたちもまた通訳の役割を担っていたのです。
―複数の人が間に入ると、「伝言ゲーム」のようにどこかで解釈の違いや、伝達漏れが起こる可能性もあると思います。その点については、どのように解決されていますか。
大山 抽象的な言い方になってしまうのですが、お互いを尊敬する気持ちがあればうまくいくと私は思っています。そしてもう一つ大事なのが、同じ目標に向かっているなど、同じ思いを共有していること。ビジネスだからお金を稼ぐっていうのは当たり前なのだけど、それとは別に、畜産の課題を解決したいとか、共通の問題意識を持つことが大切ですね。目指しているゴールが同じであれば、お互い理解しやすくなれるはずです。
異なる領域をつなぐハブになる
―アグリガールやIoTデザインガールの立ち上げと、社内でとても活躍されていた中で、昨年、NTTを退職されました。
大山 コロナ禍になり、働き方だけではなく、価値観や生き方など、何かが大きく変わる気配を感じました。ただ、会社にいると組織の目標に沿うプロジェクトしか担当できない。本当に農業のデジタル化を考えるのなら、流通が重要。自分がベンチャーの側になれば、組織を超えて会社との連携もできるのではないかと思い、退職してエムスクエア・ラボという、「やさいバス」というプロジェクトを手掛けているベンチャー企業に入って修業させてもらいました。
―さらに、今年2月には独立して会社「ON BOARD」を立ち上げられたのは、どんな経緯があったのでしょうか。
大山 社会の大きな流れに乗った、というのが正直なところです。昨年までは自分が社長になるとも思っていませんでした。今年2月に必要に迫られて、立ち上げることになりました。というのも、思った以上にデザインガールや、5G・IoT 分野の仕事が増えてしまったためです。
やむを得ず起業した、という面もありますが、可能性はグッと広がったと感じています。今はまだわずか3名の組織ですが、コロナ禍を契機に、副業やパラレルワークを真剣に考え始めたアグリガールやデザインガール、企業に属する能力の高い人たちが集まってきています。さらに、今までの5G・IoT等における活動の中で得られたネットワークのおかげで、同じく企業に属する研究者や技術者、事業部門の方々も何か面白いことができそうだと集まってきてくれています。
―ON BOARDの今後の活動について教えてください。
大山 ON BOARDは、共通の想いを抱いたさまざまな人たちが集い、安心感を得てつながり、その結果、大きな力が生まれる場にしたいと思っています。いろんな人が持つ、いろんな力を生かして一人ではなく、チームのつながりによって、新しい価値がつくられる。ある意味、タレント事務所のような感じですが、そこでいろんなユニットができると思っています。代表である私が常に中心に立ってプロジェクトを進めていくのではなく、メンバーがそれぞれの得意分野で中心になり、つながり、プロジェクトやビジネスをつくって活躍することができる場になればと思っています。
もう一つ、今、5Gに関する政府の施策に取り組んでいますが、さまざまな分野の人や組織をつなぐ触媒としてデザインガールに活躍していただいています。ベンチャーと大企業が連携することでイノベーションが起こるといわれていますが、実際に異なる組織、文化がつながることはとても難しい。アグリガールやデザインガールたちが、それをつなぐ役割を担って活躍することで、新しい価値を生む仕組みが生まれ、地域をはじめとする日本全体が元気になることを目指したいと思っています。
―最後に、大山さんの今後のビジョンについてお聞かせください。
大山 個々人が共通の思いの下、尊重し合いながら輝ける世界ができればいいなと思っています。アグリガールを始めたときも、農業分野にICTソリューションを普及させる、という目先のミッションを進めながらも、思いとしては、一人ひとりが活躍できる世界になったらいいなと妄想していました。アグリガールの活動を通して、会社に属しながらも、会社の枠組みとは別の場所で脚光を浴びる仕組みができることを経験しました。ON BOARDでは分野を広げながら、同じ思いで集うメンバーと一緒に、その夢を少しずつ実現できればと思っています。