— 八千代市は千葉県北西部に位置し、日本橋駅から電車で40分ほどの通勤圏にある自治体ですね。
周郷 1926年に京成本線が、1996年には東葉高速線が開通して沿線では宅地開発が進み、市街地となっています。現在、人口が20万人を超えました。実は八千代市は「団地発祥の地」です。1955年に千葉県住宅協会(現千葉県住宅供給公社)が開発
した八千代台団地が、日本の団地の第1号なんですね。ほかにも村上団地、米本団地、高津団地があり、京成本線八千代台駅の駅前には「住宅団地発祥の地」の記念碑があります。
その一方で、市内は自然環境に恵まれた北部地域と都市化の進む南部地域に分かれていて、沿線以外は調整区域として、農業中心の地域づくりがなされています。
竹内 この方針には「市の北半分には緑を残す」という当時の市長の考えがあったようです。新たに八千代市に転入されてくる方にその理由をうかがうと「緑が豊かだから」とおっしゃる方も多いんですよ。
— 農業面ではどういった特徴がありますか。
周郷 八千代市は北総台地上にあって地形が比較的平坦なことに加え、県内最大の湖沼である印旛沼に近く、水利面でも恵まれているため、古くから農業が盛んでした。
市内を縦断する新川沿いでは水田で稲作が行われ、基盤整備によって規模拡大を図ってきました。畑作はニンジンの指定産地で、都市近郊農業が営まれています。果樹では梨の生産が盛んです。ただ梨は主に直売所で売られ、リピーターのお客さんが購入するため、残念ながらスーパーマーケット等にはあまり出回りませんね。市内には牧場もあり、酪農家もいます。
市内の酪農家でアイスクリーム工房をつくり、道の駅でも搾り立て牛乳を使ったアイスクリームが人気になっています。
ほかには45年ほど前からイチゴ栽培が始まり、スーパーや道の駅にも出荷されるほか、平成10年より毎年1月から5月まで、観光農園でイチゴ狩りが行われています。道の駅周辺でも農家が徐々に、露地栽培から観光農園に変わりつつあります。
また農業とは少し違いますが、市内には「京成バラ園」があって、バラの花のシーズンには多くの観光客が訪れます。
— それが道の駅になったわけですね。
周郷 道の駅の登録は、施設のある市町村の長からの申請を受けて国土交通省が認可し、登録することと定められています。やちよの場合は1996年4月に登録され、翌年7月から施設の供用が始まりました。それまで千葉県では2桁国道に隣接した道の駅がなく、このふるさとステーションは国道16号沿いにあったので、それが道の駅に認定された要因かと思います。
千葉県ではここより先、南房総市で2つの道の駅が認定されており、やちよはそれに次いで県内で3番目、県北西部では最初の道の駅ということになります。県内の道の駅は、北西部より南房総のほうが多いんです。
— 道の駅として認定されるためには、どんな要件が必要なのですか。
周郷 道の駅には、無料で利用できる駐車場、トイレなどの「休憩機能」、道路情報、観光情報、緊急医療情報などの「情報提供機能」、文化教養施設、観光レクリエーション施設といった地域振興施設で地域と交流を図る「地域連携機能」の3つが求められています。つまり満たすべき要件としては、無料で24時間使える清潔なトイレがあること、十分な数の駐車場があること、道路情報や地域の観光情報などを提供していること等です。トイレは障がい者用も設置し、施設内の主要な動線がバリアフリーであることも条件です。
— 道の駅はどこも市の施設なのでしょうか。
周郷 はい、主には市が運営しています。ただ国土交通省の規定では、「市町村またはそれに代わり得る公的な団体が設置する」と定められていて、少数ですが、都道府県や第三セクター、公益法人等が設置する例も見られます。施設の整備は、道路管理者と市町村長等で整備する「一体型」と、市町村ですべての整備を行う「単独型」があります。
設置者とは別に、建屋の建設は国が行っている場合もあります。例えば高速道路のインターから一般道に出るところに道の駅が造られたりしていますが、これは国道用地に国が建てた施設です。ただその場合も、運営は主に地元の自治体が行っています。
運営主体が自治体の場合でも、設備の管理については第三セクターや、民間の指定管理者に委託するケースが多いです。
地域のJA(農業協同組合)などですね。やちよの場合、現在は「株式会社やちよリーダーファーマーズ」に管理を委託しています。
— 行政が道の駅の管理を指定管理者に委託するのは、民間のアイデアを取り入れるのが目的ですか。
周郷 そうなりますね。中には運営が赤字で自治体の財政を圧迫している道の駅もあり、そこに民間のアイデアを導入して、施設の活性化を図ろうとしているんです。その場合、市は指定管理者に委託料を払う一方で、施設の利用料金を徴収し、収入とする形がスタンダードです。指定管理者が売上を高めて利益を出せれば、その一部が市にも入ってきます。
竹内 一方、人気の道の駅では、物販を目当てに開店前から行列ができていたりします。スーパーのように、「今、◯◯が届きました!」と新着商品を紹介するマイクパフォーマンスや袋詰めイベントを行ったり、有名シェフを招いておしゃれなレストランを開設し、地元食材を使った料理を提供しているところもあります。
都心に一番近い、体験型の道の駅
— ここは今までどのような運営をされていたのですか。
竹内 ふるさとステーションでは、全国に先駆けて農産物直売所を設け、野菜や味噌、おこわなど、近隣の農産物や食品の直売を行ってきました。ただ道の駅としては規模が小さいため、2013年4月、川を挟んで反対側に、農業振興を目的とした「やちよ農業交流センター」(以下、農業交流センター)を新たに造り、これとふるさとステーションと合わせて道の駅として運用していくことになりました。
— 農業交流センターでは、どういった活動を行っているのでしょうか。
竹内 農業交流センターは、市民、農業生産者の相互交流や農業に対する市民の理解と関心を深めるなどの目的を持つ体験型の施設。農家と市民がふれ合えるよう、バーベキューやレンタサイクル、田植えや稲刈り、イモなどの収穫体験を行っています。農業体験については、地元の「農事組合法人 島田」さんが中心になって実施しており、春に人気なのはイチゴ狩りですね。夏にはブルーベリー狩りも催しています。都心から近い場所で農業体験ができるということが、やちよのアピールポイントになっているんです。
— 利用者は東京などから来る方が多いですか。
竹内 田植えなどは毎年、都内の豊洲や大島などの小学生に観光バスを連ねて参加いただいています。イチゴ狩りも市外の方が多いですね。イチゴ狩りは南房総でも盛んですが、都心から行くには時間がかかる。「八千代のほうが近くていい」と考える方は多いはずなので、潜在ニーズはまだあると考えています。
一方、イモや豆類の収穫体験などは、市内や近隣市からの参加者が多いです。先日、そら豆の収穫体験を有料で募集したところ、300区画の募集が10分で完売してしまいました。
— すごい。それだけ、市民と農家の交流が盛んなのですね。
竹内 平成11年からは「農業ボランティア養成講座」も行っており、昨年までで23期549人の方がボランティアの認証を受けられ、今年度も130人の方がボランティアとして活動しています。基本は市民と農家の交流を図ることが目的ですが、参加者には「ここで勉強して家庭菜園を作る」という人もいれば、「農地を借りて本格的に農業をやりたい」という人もいて、新規就農の方も実際に出ています。新規就農というと若い世代を想像しますが、定年後、リタイアしてから農業を始めるという方もいます。農業ボランティアのお手伝いは、農家の人手不足を補うものもあります。ボランティアを受け入れる農家が19軒ほどあって、農家にとっては貴重な労働力であり、町の人にとっては貴重な農業体験になっているという事業です。
— 農業関連以外の活動には、どんなものがありますか。
竹内 市内の洋菓子店のパティシエやフランス料理店のシェフを招いて、地元の食材を使った料理教室を開催したり、ガーデニング教室、夏休みのキッズ講座なども実施しています。
2023年度には1月の「いちごフェア」、7月の「開設記念祭」、11月の「暖を取ろう!やちよの味覚を召し上がれ」等のイベントを実施しました。こうしたイベントはホームページで告知するほか、年に4回、季節ごとにかわら版を発行して、内容の紹介をしています。
— ここは2つの施設の間に川が流れているのが印象的です。
周郷 ふるさとステーションと農業交流センターの間を流れる川は、通称「新川」、正式には「印旛放水路」といい、印旛沼の水位調節用に造られた人工河川です。一応は一級河川ですが、流れがほとんどありません。新川の先は花見川という名前に変わり、幕張で東京湾に注いでいます。印旛沼、新川、花見川ではそれぞれ水位が違っていて、間に機場があり、ポンプで水位を調節。印旛沼の水位が上がると、ポンプアップして水を川に流すのです。
利根川洪水浸水想定区域の想定最大規模では、農業交流センターは大雨が降ると水位が上がって、一部が浸水するものとされていますが、今のところ実際に水没したことはありません。山からつながっている川ではないので、大雨で大量の濁流が流れ込んでくるといった心配はないので。
新川沿いには遊歩道があり、毎年12月には八千代市街と新川沿いで「ニューリバーロードレース」が実施され、今年で第25回を迎えます。高低差の少ないコースが特徴で、雑誌『月刊ランナーズ』の「全国ランニング大会100撰」にも選ばれています。
新川沿いには多くの桜も植えられており、「新川千本桜」として知られています。中でも河津桜の並木は数年前から開花の時期の夜に、ライトアップするようになりました。テレビなどでも紹介されています。
—「道の駅」制度は1993年に創設されて以来、30年が経過しています。初期と現在でどういった変化がありましたか。
周郷 創設当初の第1ステージでは、道の駅の位置づけは「通過する道路利用者のサービス提供の場」とされていました。2013年からの第2ステージでは「道の駅自体が目的地」となり、2020年から2025年までの第3ステージでは「地方創生・観光を加速する拠点」と変わってきています。その分、新しくできた道の駅は概して規模が大きく、駐車スペースも広くとられています。
現在のやちよの施設としてのコンセプトは「都心に一番近い、体験型 道の駅」で、2019年に策定されたものです。
道の駅の第3ステージ「防災道の駅」
— やちよは千葉県内で唯一の「防災道の駅」ですが、それはどのようなコンセプトの施設ですか。
周郷 国土交通省では道の駅が第3ステージで目指す形の1つとして、「防災道の駅が全国の安心拠点となること」を挙げています。これは2020年に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」に基づくもの。防災道の駅は、自治体が申請するのではなく、大規模災害等に際して道の駅に広域的な防災拠点機能を持たせるため、国土交通省が選定し、ハード・ソフトの両面から重点的支援を行うものです。
設備の面でいえば建物の耐震化、蓄電池システムによる無停電化、非常用発電機の設置、通信の確保、受水槽、防災倉庫、防災トイレの整備などです。
— やちよは、どのような経緯で認定されたのでしょうか。
周郷 元々、ここは千葉県大規模災害時応援受援計画において警察が応援活動を行う際の拠点とされていましたし、千葉県広域道路交通計画においても、災害時の重要な拠点として、災害情報の収集・発信、防災施設の整備の強化が計画されていました。そういった経緯もあって、2021年に全国39駅の防災道の駅の1つに選定されました。
竹内 選定の理由としては、千葉県の広域防災拠点であることに加え、やはり国道16号に面していることが大きいと思います。緊急輸送道路に指定されているので、房総で何か災害が起きた際に、自衛隊や消防隊、警察、国土交通省緊急災害対策派遣隊「TEC-FORCE(テックフォース)」などの防災車両が、被災地支援のベースキャンプとして利用できますから。
— 一般の道の駅との違いは、どういった部分になりますか。
周郷 防災道の駅の要件としては、施設の無停電化、災害時の飲料水の確保、耐震型受水槽の整備、またBCP(業務継続計画)の作成などがあります。しかしここは既存の道の駅なので、選定されるまでそういったものは何もなく、それらを2021年6月の選定から、3年間で整備しなければなりませんでした。
今は2024年なので、本来であれば整備は完了しているはずなのですが、やちよの場合、現在のままだと幹線道路とのアクセスが悪く、大きな車両が入ってこられないといった問題があり、本格的な改修が必要とされています。そこで施設のリニューアルは道路の改修などに合わせて来年度以降行うことを前提に、当面は発電機を購入し、水はペットボトルで備蓄するという形で暫定的な整備をしています。
現状では大型車の駐車場も10台分しかなく、足りないということで、今後は大型車が入りやすいよう施設へのアクセス道路を新たに造成し、駐車場も拡張する予定です。これらは国土交通省で行う事業となっています。
— 新しい施設はどういったものになるのですか。
周郷 ふるさとステーションを大規模リニューアルする予定で、2025年度に工事を行い、2026年上半期オープンを目指しています。リニューアル後は72時間対応非常用発電機、ガス式電源自立型空調、太陽光発電設備等が導入される計画です。
トイレも現状では数が少ないため、これも国の事業として、防災型トイレを20基ほど設置する予定になっています。
竹内 ほかでは防災倉庫が今年3月に竣工しました。飲料水、お湯を入れれば食べられるフリーズドライの備蓄米、消毒液やウェットタオル、生理用品、各サイズのおむつなどを備蓄しており、水は10年間保つものです。ほかにブルーシート、簡易テント、スコップ、発電機、ソーラーパネルと蓄電池、ストーブなどがあります。
— 防災道の駅は、災害発生時には、どのような機能を発揮することになりますか。
周郷 災害時、ふるさとステーションは施設や道路の利用者の一時滞在施設として、農業交流センターは警察など復旧活動部隊の活動拠点として運用することを想定しています。
防災備蓄では、被災時点でここにいた人と、16号線を通行中に身動きがとれなくなった人たちの支援が主です。多くの人は道路状況が改善し安全が確認できた段階で、自宅や目的地に移動するものと考えられ、400人が3日間命をつなげられるよう、水、食料を備蓄。復旧活動部隊の作業に必要な資材については、部隊が携行してくることを前提としています。
地元の住民の避難先は、学校などの指定避難所が基本です。ここを指定緊急避難場所等にすることは考えていません。
— 能登半島地震では道路が寸断され、たまたま道の駅に居合わせた地元の人たちと観光客の人たちが協力しながら、孤立期間を乗り切ったという報道がありました。
竹内 実は私は3月まで市の危機管理課にいて、今回の震災では被災地支援の一員として能登に行っていたのです。千葉県は珠洲市の担当でした。
道路が寸断されて孤立したとき、その場にいる人にとって、道の駅というのはオアシスのような存在だと思います。能登半島地震では各地の道の駅も大きな被害を受け、うち8カ所では水・電気が使えなくなり、5カ所は一時、通信が途絶。「道の駅 能登食祭市場」「道の駅 輪島」「道の駅 あなみず」「道の駅 すずなり」などでは、地面が大きく隆起して舗装が割れたり、塀が崩れたりといった状況でした。
能登半島では「道の駅 のと里山空港」が防災道の駅に選定されています。震災直後から被災者の方々へ備蓄していた水や毛布を配布し、その後も支援物資の集配や寸断された道路の復旧作業の拠点となる「道路啓開支援センター」として機能していました。
そのほかの道の駅も、陸路が寸断して孤立した半島北部で、駐車場をヘリポートとして提供したり、支援団体による臨時医療施設が開設されたり、復旧工事関係者の宿泊場所となったり、他県の防災道の駅に設置されていた防災コンテナ型トイレを移設して避難者に利用していただくなど、救援の拠点として活用されました。比較的被害の少なかった道の駅では、被災した住民に温泉施設を無料開放したところもあります。
— ニュースで現地の道の駅の方が取材を受けて、「断水のためトイレが使えず、心苦しかった」と述懐していました。
竹内 災害時に大きな問題となるのがトイレです。能登半島地震の被災地でもやはりトイレが不足していました。私がいた珠洲市の滞在施設も食べ物はとりあえずあり、お風呂は自衛隊が用意してくれましたが、トイレは真冬の寒さの中、仮設トイレまで何十メートルも歩かないといけませんでした。
もう1つは水です。私が支援に行っていた時点で、金沢では震災の影響はほとんど感じず、我々が一時滞在していた志賀町のベースキャンプでは水も使えていたのですが、その先の珠洲市など被害が深刻だった地域はまだ断水していました。
被災地に行って驚いたのは、地面の隆起がすごいことです。ホームセンターの入り口が50cmぐらいの段差になっていたりしました。たとえ受水槽が耐震型のものであったとしても、これだけ地層がずれてしまうと給水管が外れたりして、結局水道が使えなくなってしまうのです。
— 震災ではやはり水回りが問題になるのですね。
周郷 八千代市の場合、東日本大震災は震度5強を記録しましたが、水道は市が管理する本管の被害はほとんどなく、すぐに復旧できました。ただ、各家庭の宅内配管が外れてしまうケースがあり、そうなると水道は使えなくなってしまいます。
今度、やちよで整備される予定の防災トイレは、災害対応型便器といって普段は水洗トイレとして使い、下に貯留槽がついていて、断水してしまった場合、レバーで汲み取り式に切り替えることができます。断水時には、便を流す水はペットボトルの水などを節約しながら使ってもらうことになりますが、水道が使えなくてもトイレを使うことが可能です。
竹内 防災トイレにはほかにも、普段はトイレとして使用せず、地下に便槽だけを用意しておき、被災時に簡易テントとトイレをその上に組み立てて使用するタイプや、平時は道の駅に設置しておいて、災害が起きた際はトラックで避難所などに移動させる可動式コンテナタイプのもの、トイレトレーラーといって、コンテナの下にタイヤがついていて、普通自動車で牽引して移動できるタイプのものがあります。
トイレトレーラーは「一般社団法人 助けあいジャパン」という事業者が販売しているもので、購入した自治体は「災害派遣トイレネットワークプロジェクト・みんな元気になるトイレ」というコミュニティをつくり、コミュニティに属する自治体のどこかが被災すると、全国のほかの自治体が一斉に被災地にトレーラーを送るという協力を行っています。もし全国の自治体がトイレトレーラーを購入したら、何かあった際にそれが一斉に被災地に集まってくるので、大きな助けになるだろうと思います。
ただ劣化の問題、使用する際に牽引免許を持った職員が必要になるといった課題もあり、現時点で千葉県でトイレトレーラーを入れている自治体は君津市のみとなっています。
— 道の駅や防災道の駅どうしで、情報交換やネットワークなどの協力・連携活動は行われていますか。
周郷 道の駅については、「全国道の駅連絡会」とその関東部門である「関東道の駅連絡会」「道の駅千葉県ブロック連絡会」があって、情報交換や連携を行っています。「全国道の駅連絡会」は2012年12月に任意団体として発足しましたが、現在は一般社団法人となっています。
連絡会は以前は実際に集まって協議していたのですが、新型コロナ禍において、Zoomで会議をするようになりました。「防災道の駅でも連絡会をつくったほうがいい」という声も聞かれますが、今のところはありません。
ただ能登半島地震では、全国の道の駅がそれぞれ備蓄していた支援物資を供出し、それをいったん新潟の防災道の駅である「道の駅 あらい」に集積した上で「道の駅 のと里山空港」へ輸送するなど連携し、被災地支援に協力しています。
道の駅がこれから目指す姿とは
— 八千代市では今回の防災道の駅認定に際し、道の駅のコンセプトを整理されたとうかがっています。
周郷 国交省の「道の駅」第3ステージでは、2025年に目指す姿として、以下の3点を掲げています。
1「. 道の駅」を世界ブランドへ
2. 新「防災道の駅」が全国の安心拠点に
3. あらゆる世代が活躍する舞台となる地域センターに
この提言には、外国人観光案内所での多言語対応やキャッシュレス決済の導入、子育て応援施設の設置、大学等との連携企画の実施など、幅広い施策が含まれます。
八千代市では、2022年3月に策定しました「防災道の駅やちよ整備コンセプト」および「防災道の駅やちよ整備計画」において、単なる防災施設の強化整備のみではなく、平常時の活性化・賑わいの創出が重要との考えから、「行ってみよう道の駅~農と遊びと防災と~」のコンセプトを定めました。さらに、それを基本として2023年10月にリニューアルについての基本設計を完成させ、2024年2月に「さらなる賑わいの創出」を図るためのソフト面の具体的な方策を記載した運営方針を策定。地域振興のためにも、まずは「行ってみよう」と思ってもらえることが大事なので、農業振興、防災、観光等の遊びという3要素を兼ね備えた賑わいのある道の駅を目指します。
— 今後、やちよはどういった方向に力を入れていくのでしょうか。第3ステージの道の駅づくりに向けた取り組みについてお聞かせください。
周郷 ふるさとステーションはオープンから30年が経ち、老朽化が進んでいます。防災道の駅への認定を機に、補助金を活用して大規模リニューアルを計画中です。2026年に予定しているリニューアルでは、農林水産省の農山漁村振興交付金を活用し、地域資源活用総合交流促進施設(地域連携販売力強化施設)である、やちよを整備していきます。これについては「農観連携・グリーンツーリズムの促進」を目標とする「道の駅やちよ周辺地区活性化計画」を策定し、農水省に提出、2024年4月に承認を受けました。
新たな施設では農産物直売所のスペースを拡充し、地元の農家とつながりを強化していく予定です。現在の直売所でも、品物によっては午前中に売り切れてしまうこともありますから。今後直売所の農産物出品者の皆さんとは、災害時の食料供給に係る災害協定の締結を検討するなど、平常時から災害に備えていきたいと考えています。
竹内 環境面では子どもが楽しめる空間づくりや道の駅ガーデンの充実を図っています。今、行っている料理講習も人気なので、講習内容の多様化を図っていくつもりです。今後は火を使わない防災クッキングなどにも力を入れたいですね。
防災に関しては、市民に日頃から防災意識を持っていただくための取り組みとして、利用者の目につきやすい場所に災害情報や防災訓練等のパネルを掲示して防災啓発を行ったり、イベント時に防災関連ブースを設置したり、防災体験プログラムを実施することも計画しています。
周郷 やちよの特徴である“川”をどう活かしていくかも今後のポイントです。国土交通省では地域の顔、誇りとなる水辺空間の形成を目指す「かわまちづくり支援制度」を設けていますが、印旛沼流域の市町でも「印旛沼流域かわまちづくり計画」を実施しており、その中で隣接する八千代橋水辺拠点の活用を計画中です。これらの施策を通じて、さらなる賑わいを創出していきたいと思っています。